平野紫耀 ✕ 別々の空 Episode 2

 

 

「………福岡の図書館で空きがでてね、」

 

 

働きながら、講習も受けられるしって

 

 

「福岡に行くの?」

「……………………うん。」

 

「おめでとう。」 

「まだ、わかんないけど。」

「なんで、そんなテンション低いの。笑」

「……だっ、て」

 

 

なんとなく、この先に続く言葉が

わかった気がして

 

「明日、そっちに行くね。」

 

そう言って、電話を切った。

 

 

 

どこかで、ずっと覚悟しなきゃと思ってた。

 

俺達には、お互いに夢があって

夢と、それ以外の大切を

天秤にかけることは、絶対しない。

 

お互いの夢を絶対に邪魔しない。

 

俺が上京する時もそうだった。

 

泣いては居たけど

彼女は、俺の背中を押し続けてくれた。

 

「紫耀くんなら大丈夫」

 

そう言って、送り出してくれた。

 

新幹線の中で食べた

俺が1番好きな彼女の手料理の「塩むすび」は

俺の大好物なのに涙でいつもより塩っぱかったよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

いつもと同じ駅前の景色。

 

なはずのに、

なんでこんなに違って見えるんだろ。

おめでとう!良かったな!

そう言ってあげたいのに

気の利いたことは、何一つ言えなくて。

 

「………紫耀くんも、」

「ん?」

「あそこに映る日が来るかな」

 

彼女が指差した先には

目の前の交差点向かいにある

大きなビルの大きなモニターに映し出される

これからリリース予定のアーティストの

ミュージックビデオ達。

 

「………かもね。」

「そうなるように頑張ってね、」 

 

まるで、もう会えないみたいな

そんな雰囲気を漂わせて

 

「…………福岡、遠いから」という彼女に

「でも、日本だし」なんて言ったのが俺の最後の抵抗。

 

 

「…………紫耀くんは、これからもっと忙しくなる。

わたしも、きっと自分のことでいっぱいいっぱいになる。」

 

泣いてよ。

いつもみたいに、寂しいって泣いてよ。

 

じゃないと、俺の方が泣きそうだ。

 

なんで、そんなに。

 

 

 

しっかりと前を向いて、少し微笑むようにして

笑う君は、とっくに「俺の知らない君」に

近付いてて、とっくに覚悟を決めてるようだった。

 

 

「私、頑張るから。紫耀くんも、頑張っ…」

 

いつもぎゅうぎゅうになって座って

お尻が冷たくなるまで時間ギリギリまで話した

この小さな石材の上、言葉にしたら

涙も溢れてしまいそうだから

その代わり、思いきり抱きしめた。

 

彼女は、俺の髪を撫でて

「……紫耀くんは、頑張り過ぎちゃ駄目だよ?」なんて

俺の肩に顔を埋めて言うもんだから

返事をする代わりに、またぎゅっと力を込める。

 

「時間だね、」

 

いつもは、俺が言うまで時間なんて

気にしないようにしてるくせに

そう言って、俺の胸を押し返す彼女は

やっぱり泣いてなくて、俺は置いてけぼりにされた

ような寂しさを感じた。

 

この改札を抜けたら

もう、「俺の彼女」じゃなくなって

お互いに別々の夢へと進むんだ。

 

足取りが重い俺の背中を押すのは

やっぱり君で。

 

「ほーら、遅れちゃうよ。」

 

無理矢理通された改札の向こう側。

 

振り返ったら駄目だよ、って言った彼女の声が

少しだけ震えてて、

 

彼女の警告を無視して、

振り返って、彼女の首に手を回して

改札越しに彼女に口付けた。

 

「じゃあね、」も

「またね、」も

「バイバイ、」も

なんか違う気がして

ゆっくりと唇を離したあとは

まともに彼女の顔も見れず、

俺は彼女の前から居なくなった。

 

 

新幹線のホーム。

 

コートのポケットの携帯を

取り出そうと手を入れる。

 

 

「…………」

 

さっき抱きしめた時かな。

ラップで何重にも巻かれた塩むすび

ぐちゃ、ってなったらどうすんだよって

少しだけ、笑えた。

 

指定席に座って、動き出した車内。

見慣れた景色からどんどん遠ざかる。

 

彼女が握ってくれた塩むすび

やっぱり1番美味しいのに

やっぱり1番大好きなのに

塩加減を間違えたのか

それともやっぱり俺が泣いてるせいか

 

「しょっぱ………」

 

夢を諦めない彼女が大好きで

もし、俺が引き止めてどうにかなるような彼女だったら

きっと、こんなに惹かれてなかった。

 

どんなに離れていても

どんなに寂しくなっても

積み重ねた日々が、きっと乗り越える勇気をくれる。

 

これで、良かったって教えてくれる。

 

デビューすることは、

ずっと目標に掲げてきたことだった。

 

でも、夢と引き換えに犠牲を払うことも

勿論沢山あった。

 

その中で1番失いたくなかったもの。

 

だけど、

 

 

どんなに遠く離れていても

変わらず想い続けるよ 君を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから

彼女に連絡することは、一切なくなった。

 

ていうか、彼女の夢を応援するために

送らないようにした。

 

きっと、彼女も同じ思い。

 

連絡先を消せないことだけが

俺の思いを微かに繋ぎとめてて

彼女に送れないメールの内容を打っては

下書きフォルダに落とし続けた。

 

つかれたー。

焼肉たべたいー。

 

とか、そんなしょうもない内容から

 

げんき?

会いたい。

 

なんてものまで。

 

 

 

King & Prince Concert tour 2019 in 福岡

 

来てくれるか分からないけど

チケットを贈った。

 

LIVE中、何度か彼女のために空けた席に

視線をやったけど、そこに彼女の姿は無くて。

 

 

暗転した会場内

 

Don't wanna say goodbye

もう少しだけ、このままで居たいけど

別々の空が 二人を包んで行く ミライ

 

廉の歌い出しで始まるこの曲で

ふと見上げた先に

 

客席でファンの子達の笑顔の中に

懐かしい顔が見えたんだ

 

俺の歌声に乗せた俺の気持ち

 

届いたかな

 

届いたよね

 

だって、君はやっぱり泣いてたから。